境界を決めたい方

境界確定の流れ

 

以下の流れを辿ることが多いです。
どのように進めていくか、交渉を始めたが上手くいかない等お悩みの場合は、ご相談ください。

 

@測量の準備

・対象地と隣地の登記簿、地図、地積測量図等のお取り付け

・既存の境界標の有無、現在の占有状況を確認

A実施(調査依頼)

・測量の実施(測量や図面作成は土地家屋調査士の先生に依頼等。ここで作成された図面はBの境界確認書に添付される)→公法上の境界(筆界)を探し出す

・隣地所有者又は関係者にお知らせして、立会を頂く

B境界確認

・問題なければ境界確認書(測量の結果も添付)を作成し、サインします。

※境界だけを確認するものなのか、所有権の範囲も境界と同じにするのか、第三者への譲渡の際に今回の合意を申し送るのか、どのような条項が入っているか確認する。
・境界標を設置します(費用も話合います)。
・確認書の作成等分からない場合は、ご相談ください。

 

 

基礎資料

・登記簿、地図、地積測量図
法務局で入手できます。所定の費用がかかります。
 
※対象地の地番が分からないとき
毎年郵送される固定資産税納税通知書に記載があります。
 
・登記簿について
全部事項証明書(いわゆる登記簿、書面の最上段に全部事項証明書と記載されています)を取得します。
分筆・合筆の経緯をみるため過去に遡る場合は閉鎖事項証明書(いわゆる閉鎖登記簿)、旧土地台帳を取得します。なお、旧土地台帳は和紙公図とセットで確認。
 
・地図について
@14条地図(分類:地図(不動産登記法14条1項)、「これは地図に記載されている内容を証明した書面である」との記載がある)
A地図に準ずる図面(分類:地図に準ずる図面(同法14条4項、通称公図、「これは地図に準ずる図面に記載されている内容を証明した書面である」との記載がある)のいずれか。
 
※地図が整備されている場合
土地登記簿の表題部の「地図番号」に数字の記載があります(飯川洋一ほか『読解 不動産登記Q&A』111頁(清文社、3訂版、2012年)

 
※地積測量図は速やかに取得し、図面と現況の異同を確認します。

 

境界、筆界、所有権界について

・境界、筆界、所有権界はそれぞれ意味が異なります。
 
・公法上の境界
「筆界」→定義は不動産登記法123条1号→「登記されたときにその境を構成するものとされた」→一旦形成されれば筆界は不動である(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』18頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
→当事者の合意で変更できない(最高裁昭和42年12月26日民集21巻10号2627頁)
 
※不動産登記法123条1号
「(定義)
第百二十三条 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」
 
※公法上の境界は、境界確認書などの合意書、すなわち相隣地所有者同士の合意で変更はされない(所有権界は変更される)。筆界の合意の法的意味は、地積更正登記申請の前提となるものである(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』22頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 
※公法上の境界を変更するには、分筆又は合筆登記による(大阪土地家屋調査士会「境界問題相談センターおおさか」『事例解説 境界紛争―解決への道しるべ』16頁(日本加除出版、2016年)
具体的には、隣地の境界を変更したいときは、合筆し移動させたい位置に新たな分割線を入れて分筆する。分筆部分の移転登記をする(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』56頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 

・私法上の境界
所有権界→所有権と所有権がぶつかり合うところ(「対象土地の所有権の境界」不動産登記法132条1項5号)→当事者の合意で変更できる(民法176条)
 
※民法176条
「(物権の設定及び移転)
第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。」
 
・取得時効と所有権界
「所有の意思をもって」(自主占有)の要件を満たすか必ず確認する。
 
@例えば、前所有者から、土地の境界がe-f線(本来c-d線)までと聞かされ、土地の実測をe-f線までとして、前所有者から土地を購入し、長年土地を占有し続けたケース
→原則、境界及び所有権界は本来のc-d線である。
→もっとも、時効取得の可能性がある。その成立が認められる場合は、「所有権」界はe-f線までとなる。
境界は時効取得により影響を受けず、本来のc-d線である。さらに、分筆のうえ、e-f線までの所有権登記を隣地所有者に請求することになる。これが認められると境界も本来のc-d線となる。
(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』46頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 

※民法162条
「(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」
 
A例えば、土地の境界が本来c-d線であるところ、次第に無断でe-f線までの屋根を越境した又は耕作し始めて、年月経ったケース
→時効取得が認められない方向→すなわち自主占有が否定される
∵売買などでe-f線までの土地の占有を取得したものではない
(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』48頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 
・筆界の創設事由→問題となっているのが、原始筆界なのか分筆によって生じた筆界なのか等を確認する(大阪土地家屋調査士会「境界問題相談センターおおさか」『事例解説 境界紛争―解決への道しるべ』71頁(日本加除出版、2016年)
 
・原始筆界と創設筆界
原始筆界とは、「明治初期に近代的土地所有権の区画を示す地番境として原始的に形成された筆界」をいう。
登記簿表題部の地番欄の本番と本番の境界として表示されている。その後、分筆・合筆を繰り返し新たな筆界が創設されていった(創設筆界)寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』14、15頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 

・事後的に境界を決めた場合の法律関係
※示談書で境界を決めた場合の法律関係
隣地が境界不明の場合、本来のa-c線が境界であるところ(和紙公図等で把握できる)、a-b線を境界として、隣地所有者同士が示談書を作成して、紛争を解決するケース
「筆」界→本来のa-c線のままである
「所有権」界→a-b線と形成(民法176条及び和解の確定効)
※所有権界が形成された後に、第三取得者が生じた場合、
登記簿→変更はないものの、筆界と一致しないa-b線としたことによる所有権は相手方に譲渡されたことになり、相手方は分筆して移転登記するよう求めることができる。
(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』383、390頁(日本加除出版、改訂版、2018年)
 
※隣地の境界トラブルでa-c線が筆界兼所有権界と主張したうえ、筆界確認訴訟を提起し和解で所有権界のみがa-c線として解決したケース
筆界と所有権界とにズレがないので、その後当該土地を売却しても問題が生じないと考えられる。
 
・筆界と所有権界のズレとどう考えるかは、寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』73頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。ズレの典型例は、同書82頁。
 
・筆界と「占有」界のズレの事例は、大阪土地家屋調査士会「境界問題相談センターおおさか」『事例解説 境界紛争―解決への道しるべ』83頁(日本加除出版、2016年)
 

※不動産登記法14条
「(地図等)
第十四条 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
2 前項の地図は、一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものとする。
3 第一項の建物所在図は、一個又は二個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。
4 第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。
5 前項の地図に準ずる図面は、一筆又は二筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。
6 第一項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。」

 

筆界判定について

・筆界判定の理論的過程
明治初期に新たな所有権界の創設と共に新たな境界(筆界)が創設されていった。その経緯から、所有権界と筆界は一致する、又は所有権界は筆界を推認する関係にある。所有権界の探索には、売買契約書がある。占有状況・境界標もあるが、占有状況・境界標は地図公図地積測量図があるときは、劣後的な資料となる(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』83頁、85頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 
・筆界認定資料の詳細
北條政郎その他『[改訂版]境界確認・鑑定の手引-鑑定事例と裁判事例-』22頁(新日本法規出版、改訂版、2015年)
 
・筆界判断の骨子
※図面が最初の基礎、スタートとなる。
「第一に、現存する境界標、地形、建物等の境界を表すと認められるものが公図、地積測量図などの図面あるいは精通者等関係者の証言と整合性が取れているかの判断をし、それで認定できない場合は、生垣や林相、建物の土台や排水溝などを基に占有状況から判断をし」、これらでも判断できないときは総合判断となる(北條政郎その他『[改訂版]境界確認・鑑定の手引-鑑定事例と裁判事例-』32頁(新日本法規出版、改訂版、2015年)
 
※分筆経緯は筆界調査の第一歩である(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』173頁(日本加除出版、改訂版、2018年)
 
※地積測量図の年代ごとの変遷は、北條政郎その他『[改訂版]境界確認・鑑定の手引-鑑定事例と裁判事例-』41頁(新日本法規出版、改訂版、2015年)に詳しい。
※筆界確認の有力な資料は、地図、公図及び地積測量図等の図面である(北條政郎その他『[改訂版]境界確認・鑑定の手引-鑑定事例と裁判事例-』61頁(新日本法規出版、改訂版、2015年)
 
※原始筆界の判定資料

登記簿上の分筆・合筆の経緯の調査及び和紙公図等の図面の確認である、原始筆界の判定には和紙公図、分筆界(創設筆界)については地積測量図が重要であるという基本的原則がある(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』88、137頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。寳金敏明先生によれば、旧来の裁判実務においては法曹が図面などの鑑定的知識に乏しかったことから、これを戒めるべきとの指摘がある(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』106頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。

原始筆界:地租改正事業に際し形成された筆界を物語る土地台帳附属地図(同書121頁)→地図により筆界の形状などが確認できる
創設筆界:登記官が分筆申請に添付された地積測量図を拠り所に筆界を形成(同書162頁)→地積測量図により創設筆界の形状などが確認できる
 
※登記簿の「地積」公簿面積と実測面積とを対比する→筆界と占有界の比較(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』172頁(日本加除出版、改訂版、2018年)

 

境界確認書について

・土地売買契約書の条項
次のような売主の境界明示の条項が記載されていることが多い。
「売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地に置いて明示する」
境界の明示の仕方も、
@この条項のように現地で指示するのか、
A実測をするのか、
B実測立会いをした上で境界確認書の押印をするのかは、
ケースバイケースである。
なお、この「境界」という文言は所有権界を意味する。公法上の境界は当事者の合意では決められないからである。
 
・いわゆる境界確認書の法的効果
※厳密には所有権界の確定であり、民法上の和解(民695、696条)に基づく。筆界は当事者の合意では変更されないことが理由である(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』207頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
加えて、争いのない境界は筆界である可能性が高いという事実上推認が働くこと、隣地侵害がない越境侵害がなく互いに所有権の侵害ないことが担保されること、と言う意味合いがある(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』358頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
境界確認書が地積更正登記や分筆登記の添付資料となれば、公法上の境界といった意味合いを有するが、必ず境界確認書どおりと限らない。
 
※境界確認書上で、

@境界だけでなく所有権の範囲を定めることは、所有権界の形成の確認的意味合いがある。
A清算条項も追記する場合は、越境(所有権)侵害がないこと、それに基づく不法行為に基づく損害賠償を請求しないことの意味合いがある。
B所有権界としての境界の確認は、境界確認の当事者でない特定承継人に及ばない。契約の相対効の原則により、特定承継人を拘束しない。いわゆる第三取得者に対する境界を順守させるというは、契約当事者の義務である。第三取得者が遵守しない場合は、契約当事者の債務不履行の問題にはなるものの、第三取得者を法的に拘束することはない(寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』394、395頁(日本加除出版、改訂版、2018年)。
 
※いわゆる境界確認書には実印を押印しなければならないかの問題は、寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』366頁(日本加除出版、改訂版、2018年)に詳しい。
 
※立会拒否、承認拒否の場合の対応は、寳金敏明『改訂版 境界の理論と実務』368頁、371頁(日本加除出版、改訂版、2018年)に詳しい。
 
・手続き選択
※境界をはっきりしたい→筆界特定:時間労力の負担が少ない、境界確定訴訟:時効取得の主張が可能、いずれの申請においても土地家屋調査士の先生ご作成の実測図が必要になる。
※相手の建物がはみ出している、越境している(所有権界に争いがある)→所有権確認訴訟+所有権移転登記請求、所有権界の範囲を示すため土地家屋調査士の先生ご作成の実測図が必要になる
大阪土地家屋調査士会「境界問題相談センターおおさか」『事例解説 境界紛争―解決への道しるべ』105頁(日本加除出版、2016年)

 

 

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